その11 題字
第2号(昭和49年12月号)の題字は、江戸文字にて「東京かわら版」となっております。
創刊号を手にした関岡扇令師(その5で登場)が、明朝体の活字題号では格好がつかない
と、江戸文字の第一人者だった鈴木本和さんに声を掛けてくださり、書いて頂いたものです。
扇令さんは伝統木版刷師としてその技を継承すると共に、東都納札睦主宰者で納札の世界
でもその中心となっていた方です。以前は全国の神社・仏閣にて「扇令」「本和」の納札やお二人
連名ののれんを良く眼にしたものです。先代の扇令さんも戦前の紙統制時代に、私がかって
勤めていた井上清子特許事務所と繋がりがあったとかで、因縁浅からぬこともあり、小誌の
発行前には毎年木版年賀状を依頼にお宅に伺い、色々と木版のお話等を聞いておりました。
本和さんに書いてもらったロゴは、長い間、小誌の表紙を飾って頂きました。
この後、第10号で今の版型に変更した折に、「落語」「講談・浪曲・新内」のタイトルを寄席文字
にて橘右近師匠に書いて頂きましたが、殆ど原稿料も用意できなかったのに、寄席文字と
江戸文字の両第一人者の手による文字を使用させてもらったわけで、ま~贅沢なことでした。
(残念ながら、お二人は亡くなっており、現在の寄席文字・江戸文字は橘右橘師によるものです)」