下町B級観光案内  飯田一雄


○一茶の銅像が目を引く炎天時の境内は俳句に興味のある方々の吟行会におすすめかなの巻


 東武線で竹の塚駅下車、ここは埼玉県に接する最果ての足立
区。東口を出て煉瓦敷きの歩道を歩いているとマンホールの蓋
に俳句が書いてある、フシギな道路だ。あっちにもこっちにも
蛙が相撲を取っている絵があって「やせ蛙 負けるな一茶是に
あり」の句が入っている。
 この町は足元から文学の香が立ち上る…かもしれないがドブ
の蓋であります。駅から約十分ほどで、これから厳寒が来よう
というのにその名も炎天寺(3883-0787)に到着です 。
 境内に江戸後期の俳人、小林一茶の姿を発見できます。等身
大の銅像で、道中ちょいと休憩とリラックスしている姿です。
よく見ますと、どこにでもいるイナカのおっさんそのものの表
情だ。視線を横にずらすと小さな池があり島が浮いていて蛙が
相撲を取っています。池の奥に立派な石碑が建っていてマンホ
ールと同じように例の「やせ蛙…」の句が刻んである。
 どうも、なんですね。俳人というものは「池」とか「蛙」が
好きなんですかね。芭蕉と言ったら「古池や…」でしょう。
 この小林一茶が炎天寺に立ち寄った証拠として寺を詠んだ句
が、ちゃーんと残っています。

 「蝉鳴くや 六月村の炎天寺」

 うーむ。なかなかの出来栄えである。こういう立派な石に彫
ってあるとやはり唸ってしまうなあ。蝉と六月をかけたのかし ら。
 まだある。「むら雨や 六月村の炎天寺」うーむ、むら雨と
六月をかけたのであろう。アレ。小林のおッさんも結構アレじ
ゃないんですか。言いにくいけれど、手抜き。こんなのどこか
で詠んだことありますもの。

 「蝉鳴くや 根岸の里の侘住まい」
 「むら雨や 根岸の里の侘住まい」

 ほらね。しかし、俳句というものは重々しき岩石に詠みにく
いカナ文字で彫られていると正直なもので、うーむと腕を組ん
で感心してしまうのはどうしてだろうか。
 日本中でたった一人しかいなかった落語家、春風亭柳昇さん
のくだらない俳句「たんよりも少しきれいなつばきかな」だっ
て石碑にしたら重厚な感じがするかしら。しないよね。
 さて、炎天寺。毎年十一月二十三日、勤労感謝の日には寺の
行事として「一茶まつり」というのが行なわれる。一茶行列に
一茶の法要忌、献茶式と内容豊富だがなんと言っても自慢でき
るのが全国小中学生俳句大会を行なっていることだ。今年で四
十二回目、昨年は二十二万三千句あまりの投句があったそうな 。

「おじさんとスイカがいっしょにやってくる」(愛知 小6)
「ひるね いびき うるさいでござる父上」(大阪 中3)
「てやんでい 彼は江戸っ子 秋祭り」(愛知 中1)

 炎天寺では本堂の前に一メートルほどの石の蛙が鎮座してい
る。福が帰ってくる福蛙なのだそうだ。駄洒落のようだなあ。
 寺ではお正月限定の開運招福のお守りとして黄金景気蛙を一
個百エンで販売するのだそうだ。俳句も巧くなるかしら。